iDeCoの受け取り方法は3種類あります。受け取り方法によって、それぞれ課される税金も変わってくるため、その違いを知っておくと便利です。
この記事では、iDeCoの受け取り方法による税金の違いについて詳しく解説するとともに、それぞれの受け取り方法におけるメリット・デメリットもあわせて紹介します。ぜひ参考にしてください。
iDeCoの受け取り方法については、時期も含めて受給者が決めることができます。ただし、そのためには一定の条件を満たしていることが必要です。iDeCoは受け取りの条件として年齢が決められているため、その範囲内で、受給者が受け取り開始時期を選ぶことになります。
開始時期を決めたら、iDeCoを積み立てている証券会社などに受給の申請書類を請求します。書類を提出した後は、老齢給付金が下りる裁定通知と振り込みを待つだけです。
iDeCoは、原則として60歳から受け取りが可能です。しかし、給付を受けるためには通算10年間の加入期間が必要となっています。50歳を過ぎてからiDeCoに加入した場合、60歳時点で10年が経過していないので、60歳で受け取ることはできません。
たとえば、52歳でiDeCoに加入した場合、受け取りは62歳からです。加入が遅れるほど受取期間は遅くなります。2022年4月からは、受け取り開始時期を75歳まで延長することも可能になりました。
iDeCoの受け取り方は3種類あります。「年金」「一時金」「年金と一時金の組み合わせ」いずれかの方法を自分で選択することが可能です。それぞれの受け取り方法について、どのような方法であるかを解説します。
年金での受け取り方は、iDeCoの資産を一部売却しながら、一定年数で分割して受け取る方法です。iDeCoは金融商品なので、受け取るためには売却が必要になります。受け取り期間は、最短で5年、最長で20年間です。
一時金は、iDeCoの資産を全額、一度に売却し、受け取る方法です。年金の場合は5年~20年で分割されるところを、一括で受け取ることになりますので、金額は必然的に大きなものになります。
iDeCoの資産を、年金と一時金とに分けて受け取る方法です。一部は一時金としてまとまった金額で受け取り、残りは指定した年数で数年分の年金として受け取ります。
iDeCoの受け取りにかかる税金は、受け取り方法によって異なります。年金、つまり分割でiDeCoを受け取る場合は「雑所得」の扱いです。一方、一時金として一括で受け取るなら「退職所得」という扱いになります。
雑所得は、公的年金と同じ扱いとなるため、公的年金とあわせた額に「公的年金等控除額」が適用され、残りの分に課税されます。
退職所得扱いの場合は「退職所得控除」が適用されますが、控除を受けるには「退職所得の受給に関する申告書」の提出も必要です。
iDeCoの受け取りにかかる税金の種類について、もう少し詳しく解説します。税金の計算方法も合わせて解説します。
年金としてiDeCoを受け取るとき、雑所得の税額を計算するには、まず「収入金額-公的年金等控除額」から所得金額を算出します。この金額が、年金としての課税対象額となります。公的年金等控除額は雑所得の金額や、本人の年齢が65歳以上であるかそうでないかによって異なるものです。雑所得となった金額を計算してから、国税庁のホームページなどで控除となる率を確かめましょう。
さらに、給与所得や事業所得などの総所得を加算した最終的な所得金額から税額を算出します。
一時金として受け取る場合、退職所得の課税額は「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」という式で計算することができます。この式からわかるように、所得を半分として計算をするため、退職所得の税負担は軽くなります。
また、所得控除は、勤続年数に比例して多くなるよう定められており、勤続年数が20年を超えると控除額が加算されます。退職所得控除額の計算方法は次のとおりです。
勤続年数 |
退職所得控除額の計算方法 |
---|---|
20年以下 |
40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円) |
20年超え |
800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
※参考:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
iDeCoの一時金受け取りから14年以内に、勤務先から退職金を受け取る場合は、勤務先からの退職金とiDeCoの一時金を合算した金額から「退職所得控除額」が控除されることとなります。
大きな金額から一定金額の控除をおこなうことになるため、課税対象額が増えてしまう可能性があります。節税をするならば一時金を受け取るタイミングに注意が必要です。場合によっては一時金よりも、年金型の受け取りを選択したほうが良いかもしれません。
退職所得控除には「5年ルール」と呼ばれるものがあります。5年ルールは、4年以内に重複して退職金を受け取る場合に、退職所得控除の計算上は勤続年数の重複期間を含めないというものです。
つまり、2種類の退職金の受け取りについて間に5年が空いていれば、退職所得控除を2度使え、税制上有利だということになります。自分自身で判別が難しい場合は、専門家に節税できる受け取り方法を相談すると良いでしょう。
iDeCoを一時金として受け取る方法と、年金として受け取る方法、結局メリットが大きいのはどちらなのでしょうか。それぞれについて解説します。
iDeCoを一時金で受け取るメリットとしては、勤続年数に比例して退職所得控除額が大きくなることが挙げられます。iDeCoの一時金は退職所得にあたりますが、退職所得は分離課税なので、全体を見れば総合課税に比べて税率が低く、国民健康保険料に影響しないこともメリットです。
さらに、iDeCoの給付には手数料がかかりますが、一時金であれば手数料がかかるのは1回のみとなります。手数料を節約するという観点からも、一時金での受け取りには一定のメリットがあると言えるでしょう。
勤続年数が短い場合、退職所得控除額が少額になることが、一時金のデメリットと言えます。また、退職所得控除を差し引いた場合も、そもそも勤務先の退職金の額が多ければ税負担が大きくなるでしょう。
ただし、退職金をもらうタイミングによっては、退職所得控除のメリットを最大限に活かせるかもしれません。自分のケースがどれにあてはまるかについて、専門家に相談してみることをおすすめします。
年金でiDeCoを受け取るメリットは、継続的に一定額を受け取れることです。退職後、iDeCoを一定額ずつ受け取ることができれば、状況によって公的年金の繰下げ受給が可能になるでしょう。公的年金を繰り下げ受給すると、1カ月当たりのもらえる金額が増えます。
さらに、年金として受給した分を差し引いた資産は、引き続き非課税で運用することができるため、資産形成を続けられ、受給金額が増えていく可能性もあります。
iDeCoは1回の受け取りに対して、口座管理手数料や給付手数料がかかります。一時金なら1度で済む手数料も、年金での受け取りでは毎月負担しなくてはなりません。
年金での受け取りは、一時金に比べて税率が高いため、公的年金の受給前にiDeCoの受け取りを済ませておくなどの工夫が必要です。さらに、iDeCoの受け取り金額も所得として扱われるため、国民健康保険に加入している場合は翌年の国民健康保険料が値上がりする可能性もあります。
iDeCoは老後の資産形成にとても有用な制度です。しかし、iDeCoに関わる税金の種類や税率は複雑で、自分がどの方法でiDeCoを受け取れば最もお得なのかを見極めることも、知識がなければできません。iDeCoの運用について詳しく知りたい方はマネーセミナーで学んでみませんか。
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